読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

元村有希子「科学のミカタ」(毎日新聞出版 2018)

読んでいてとにかくおもしろい、楽しい。最後の章は家族や自身の闘病を書いているので全編にわたってではないけれど。

5つの章立てに清少納言の「枕草子」からタイトルを付け、著者の文を借りるなら「科学記者として20年近く、科学技術や環境問題をウォッチし」、出会ったいろんなテーマを清少納言風に「とりとめもなく書き散らかしてみた」本となるけれど、一つの文の中にちりばめている知識やエピソードはカラフルで、それぞれのつなげ方が職人技。

12ページにわたる長めの文「体内コンパス」は、飼い猫の数が飼い犬の数を上回ったという入り口から、ひとり暮らしの友人たちのペット事情、犬の特異な能力に触れ、犬の方角を見分ける〈地磁気を感じ取る〉能力からハトや放牧中の牛が北か南を向いて草を食べる傾向など細かなネタを織り交ぜ、犬の鋭い嗅覚w利用したがんを探知する犬の存在を紹介し、山形県金山町ががん検診に探知犬を試験的に利用した具体例を挙げ…とにかく話が次々に転がりながら一つひとつに科学の知識の裏付けがあり、最後はイルカに言語能力があることの証明につなげ、気の利いたオチで締めくくり。

文の中身が頭に入るかどうかは別として、ダブルミーニングの一つ〈科学の見方〉の端っこに触れた感はある。

元村有希子「科学のミカタ」