読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

濱野京子「谷中の街の洋食屋 紅らんたん」(ポプラ文庫ピュアフル 2019)

濱野京子さんつながりで読んだ1冊。

かつてあった地域雑誌「谷中・根津・千駄木」に敬意を表し、作者が好んで歩く谷中が舞台。

主人公は大学を卒業したけれど、就職もアルバイトも面接で落ちまくった奈留美。どうも同世代の中でちょっと浮いている、友人を作るのが苦手…そんな性格が就活に向いていないのかもと思っています。

留美は髪をカットした谷中の美容室で縁を得て〈洋食屋・紅らんたん〉の接客・会計・食器洗いのパートとして働き始めます。紅らんたんの常連さんたちは揃ってお年寄りばかりで店を切り盛りする千佳さんは74歳。皆、クセはあるけれど憎めない個性派ぞろい。

そんな常連さんたちが垣間見せる家族の訳あり事情に、千佳さんの細やかな句配りと指示で奈留美が関わり合い、いつしか自分の考えを言えるように…。

8つの小さな物語が収められていますが、お年寄りの家族の物語はこういう終わり方があるのかとうなずけます。

 

濱野京子「谷中の街の洋食屋 紅らんたん」