読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

朝倉かすみ「ともしびマーケット」(講談社 2009)

〈あとがき〉で作者が綴っているように、連作短編小説集ではあるけれど、札幌の地域スーパー「ともしびマーケット」を介して行き交う人たちが巡り巡っての不思議な関わり・交わりをしてしまう感覚がおもしろい物語…かと。

登場人物たちが本人にも解できない・分からない感情や心持ちを回りくどく説明し、そのことに妙に惹かれる。一人ひとりの行動をのぞき見し、これは何なんだ?というおもしろさを味わい、最後のごった煮のような終わり方にささやかながらの幸せを感じてしまう。

気持ちの整理なんかつけないままの日暮らし…ふと吉田拓郎の「今日まで そして明日から」の歌詞の一部「私は今日まで生きてみました。そして今、私は思っています。明日からもこうして生きていくだろうと」を思い出す。

ネット上で文庫版の表紙を見ると単行本とはまったく違う世界に思え、読んだ感覚も変わっていくのかも…と。

「ともしびマーケット」