読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

岡康道×小田嶋隆「人生2割がちょうどいい」(講談社 2009)

2人が50歳の頃で13年前の対談集。2人とも向こうの世界にいってしまったので不思議な気分で読んだ。

1970年代前半、有名な進学校小石川高校で同級生だった2人が高校時代から2000年代にいたるまでの間に体験・考えたさまざまなテーマをリラックスしながらも互いに思考をフル回転させながら語らった記録。

高校時代に〈文人の文章をまねるパロディ:文体模写〉遊びをしていたという2人の〈いきなり外れた高校生〉から始まり、話があちこちに飛んだり、広がったりしながらも2人の話は楽しく、刺激的。どちらかというと小田嶋隆さんが脇道からネタを振り、岡康通さんが自身の体験や疑問やどうだろう的な自身の感じたことを語り、それに小田嶋さんが説明をつけ、話題が濃くなっていく…そんな印象を受ける。

13回に分けて対談し、どれも2人の話が勝手に耳に入ってくるが、第12回「ワーカホリックと家庭と広告」が、2人にとって劇的な30代で、〈生き抜いた〉期間だったことを知ることができた。小田嶋さんはアルコール依存症、岡さんはクリエーターへの遅い転身から一番働いたワーカホリック時代。広告の時代性にも触れ、今のテレビとインターネットの広告の違いやつながりがなるほどと解けていく思いがした。

〈あとがき〉で、タイトルの「2割」について2人がビジネス・仕事の観点で書いていて、仕事観と個性の違いがある書き方でとても愉快。

共通しているのは、2人とも高校生の頃から体験したことや知識を記憶する能力に長け、それを収納し、必要に応じて断片をつなぎアイデアやひらめき、組み立てていく独特の方法を持っていたこと…稀なことかな。

高校生くらいの若いころから仕事や家庭、家族を含めた30代以降の気持ちの整理をするのには時代を超える2人のうんちくには普遍性があり、何年かごとにパラパラ読み返す味がある。

「人生2割がちょうどいい」