読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

菊地慶一「悲しみの夏 北海道空襲を忘れない」(中西出版 2022)

菊池慶一氏は、空襲の記録「紅の海」「ハマナスのかげで」「語りつぐ北海道空襲」「あの子たちのいた夏」など、網走空襲をはじめ、昭和20年7月14.15日の北海道空襲の記録を長期間にわたる調査、聞き取りなどの調査を行い本にまとめてきました。

90歳を迎えた氏は、〈あとがき〉で「戦争という時代に育った人生を送らざるを得なかった世代の人間として、戦争で犠牲になった人々を忘れないという一徹で、この冊子を発刊するにしました(抜粋)」と綴っています。

菊池慶一氏は絶えず調査や聞き取りを重ね、以前の資料では記録できなかったことがらを丹念に拾い上げ、新たな資料として残しています。

北海道立デジタルライブラリーの北見市立図書館「昭和20年7月15日 常呂空襲 綴られた常呂のできごと」で氏のそうした姿勢を著作から引用してますが、常呂空襲で漁船員1人が亡くなった事実が判明しうつも、氏の「紅の海」では氏名不祥であったが、その後の調査で貴重な証言を得て氏名が判明したことを「語りつぐ北海道空襲」でその経緯を含めて記録しています。

「悲しみの夏」を読み思うことは、北海道空襲の体験や記憶を直接聞き取ることは難しい時代になっていますが、間接的な体験を含めて拾い集めること、そのことが次の世代に引き継ぐ大事だということです。

また、「悲しみの夏」では、道内各地の空襲とその時の被害について、氏は何回も「なぜ?」の問いかけをしています。これは自身に向けたむのであると同時に読み手にもむかっていること。

ひとつの文が3ページほどで、氏の思いも交えながら事実や記録を読みやすい文にしているので、住んでいる地域のことだけでも触れることをオススメ。

「悲しみの夏 北海道空襲を忘れない」