読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

笹山敬輔「ドリフターズとその時代」(文春新書 2022)

ドリフターズを舞台演劇として捉えている視点が新鮮。

テレビ番組ではあったけれど、劇場などのステージに舞台を組み、会場の観客第一の手法は、今から思うとすごい戦略だと思う。

もう一つ、荒井注が脱退するまでのドリフターズは、全員がミュージシャンというベースがある集団。志村けんが加入後も志村けんのアイデアによる〈音楽〉を積極的に取り入れたが、ミュージシャンか否かという部分と根っこにある音楽の基本が違っていたことに気づかされた。

文中、〈萩本欽一という本流〉という項目で、ナンシー関の評として「日本のバラエティ番組の歴史において、本流は萩本欽一にあった」とし、「萩本こそがテレビというメディアの本質を見抜き、テレビ独自の技法を追求した最初のコメディアンだから」と綴っている部分に目がいった。

〈はじめに〉で、著者が綴る「今ようやく、あの頃に感じていたドリフの魅力を言語化できる。本書を通じて、ドリフの尽きせぬ魅力を読者と共有できればうれしい」という気持ちが存分に伝わってくる総合的な評論。

笹山敬輔ドリフターズとその時代」