読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

「おいしい沖縄」(河出書房新社 2022)

沖縄の食文化に関する24人のエッセイや文を集めた「おいしい文藝」シリーズの最新作。

もっとも古い文は、岡本太郎の「沖縄の肌ざわり(抄)」(1960年)。東京で初めて見た琉球舞踊のすばらしさに惹かれてアメリア統治下の沖縄へやってきた岡本太郎が驚いたのは、招かれた歓迎の宴で泡もりを注文すると、周りの人たちがケゲンな顔をする。泡もりを飲むのは岡本太郎だけで、沖縄の人たちはビールかスコッチウィスキーのコーク割り。聞くと、あまり泡もりを飲まなくなり、製造業もだんだん衰え廃業するものも出てきている…普通の飲み屋で泡もりを注文すると、置いてないと断られ、1杯80セントの日本製ビールを飲まされた…そんなことを綴っている。

次に古いのは、大城立裕「ソーキそば」(1977)。戦争を経て、「琉球料理や琉球舞踊あるいは民謡には泡盛ときまっていたのに、戦後このルールは崩れた。戦前きずかれた生産基盤が戦争で潰れたあと、それが復興するまでには、ウィスキーやビールで間に合わせてしまい、しだいに大衆の嗜好を慣れさせたから…沖縄の酒場はふつう泡盛を売らない…一気にぐっと飲めないので回転がのろく、店の稼ぎにならないから」と綴りつつも、沖縄の本土復帰から5年後の状況として、「いま、泡盛工場が49社、銘柄は60をこす」。これをフル稼働させ、アルコール度数を県外、県内で分け、割って飲むなどの習慣づけで戦前並みに地元消費を高め、ボトルも小さな2合瓶にしてはどうだろう、民謡酒場にも泡盛が現れたらおもしろいだろうななどと書いている。

戦争を挟んで、沖縄世からアメリカ世、そしてやまと世へと強制的に移り変わっていく中で、沖縄の食文化が短期間で変わっていったことが2つの文だけでも感じ取れる。

「おいしい沖縄」